右に見えるのは東海道本線。
写真にはありませんが、左には東名高速道路があります。
海のそばを走るこの場所は天気のいい日ならドライブするにはとても気持ちのいい場所です。
いま私たちはここの下り線側の橋の下で工事を行っています。
昭和53年につくられたこの橋は今年で31才。
人間ならばいろんな人生経験を積み、体力気力とも充実の三十代前半。
仕事もひと通り覚え、一番活躍できる年代の始まりといったところではないでしょうか。
しかし、作られてから30年たったこの橋はすこし病んでいます。
ここは国道から海まで約50m。
晴れた日は海がきれいに見えます。
景色はとても良いのですが、コンクリートにとっては非常に厳しい環境になってしまいます。
海風が強い日、波が高い日は、海水が空中を漂い常に橋の表面をぬらします。
その海水の中に含まれる塩分はやがてコンクリートの表面から内部にしみこんで行き、中にある鉄筋を錆びさせてしまうのです。
錆びはコンクリートを少しづつ押し出し、ついにはコンクリートの表面がひび割れてしまい、破片が落下します。
そこからさらに塩分が進入し、もっと鉄筋をくさらせることになってしまいます。
ここは西側の橋脚付近ですが、コンクリートが剥がれ落ちてしまっています。
中央付近では錆びた鉄筋が見えています。
このような箇所が橋全体に広がっていました。
これまで土木構造物をいくつか作らせてもらった私はこの橋をみて、なんだか心にざらっとしたものが触ったように思いました。
このまま放置すれば腐食はますます進み、橋自体の強さも失ってしまうかもしれません。
補修は緊急を要する! 国土交通省の強い要望があり当工事で補修工事を実施することになりました。
学生のとき、鉄筋コンクリートは半永久的に壊れない材料だと先生から教わりました。
しかしそれは完璧な条件のもとで打ち込まれ、なおかつ外からの浸食がない環境にあるときだけだと、この橋を見て私は思いました。
コンクリートや鉄で出来た橋は、人間の体が年老いていくのと同じように、海からの塩水やその上を走る車の重さなどから攻撃を受け次第にその体が衰えていくものなのです。
定期的にお医者さんの診断を受け、ときには治療が必要なときもあります。
橋や道路は生きています。
これから私たちはこの橋を直します。
将来もずっと安全に走れる道路を作るために。
これからが、工事の第2ステージです。